インターナショナルハラルシルクロード

イスラム各国の食品輸入規制

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イスラム各国の食品輸入規制

国際ハラル食品貿易はおよそ6000億ドル、多くの国々を網羅しており、イスラーム国家の一部では主に北米、欧州、オーストラリア、ニュージーランドからハラル食品を輸入しています。
食品製造技術の進歩やブランドの浸透、フランチャイズチェーン店の増加、輸送手段の発達などに伴って,ハラル食品の国際貿易は以前に比べてますます増加して来ています。

中小の食品企業だけでなく巨大な国際的食品企業も、ムスリムが多数を占める国々だけでなく、それ以外の国々に住むムスリム消費者に向けても製造し、マーケティングをするようになってきています。
しかし、多くの企業はハラル認証に必要な要件とイスラーム諸国の輸入規則について明確に理解しているとは言えないのが実情であり、食品製造企業はイスラーム市場向け製品の生産についての諸要件を十分理解することが不可欠です。
それはまた、輸出には製品の安全面だけでなく宗教的な側面にも配慮した上で、各国の輸入要件の理解が必要ということでもあります。
多くのイスラーム国家は輸入食品だけでなく国内産の食品にもハラルに関する法やガイドラインを制定しています。
輸入品も国産品も基本的な要件は同じですが、法や規制の施行方法が異なります。主なイスラーム国家のハラル認証事情は次のとおりです。

マレーシア(Malaysia)

1970年代、外資系食品企業がマレーシアでレストランを開業して以来、消費者は輸入食品を経験することになり、同国政府は国内産、輸入品にかかわらず、ハラル食品に対する処理手順やガイドライン、法規の制定を行いました。
1975年制定の通商法令では、食品に偽ってハラルのラベルを張ったり、記号やマークを表記したりすることは有罪にあたるとしました。その後数年を経てハラル認証が具体化し始めました。
同国政府は1982年総理府内のIslamic Affairs Divisionの下に、ムスリムが利用する食品、飲料、その他の品々を評価判定する委員会を設置、この委員会は独立してそれらの製品をチェックし、生産者、流通業者、輸入業者にハラルに対する認識を浸透させる責任を負うことになりました。また同年に政府は規則を制定して、同国へ輸入されるすべての肉類(牛肉、マトン、鶏肉)は、ハラル認証されなければならず、また総理府のIslamic Affairs Divisionと動物検疫局が公認した食肉処理場からの肉だけが、輸入を認められるとしました。
Islamic Affairs Divisionはその後総理府から独立し、Islamic Affairs Departmentに昇格、この新しい部門はJAKIMと呼ばれ、ハラルに関する事柄全般を監視する部局となりました。マレーシアの規則によれば、畜肉類と鶏肉に対するすべてのハラル認証書は、JAKIMによって認証書の発行を公認されたイスラム関連機関によって発行、署名されたものでなければならないとされました。
そのような輸入牛肉や輸入鶏肉を供給する屠畜場は、マレーシア政府の二つの機関すなわちJAKIMと動物検疫局(The Department of Veterinary Services)の承認を得る必要があります。加工食品については輸出国の公認されたイスラム関連組織によって発行された、ハラル認証書で構いません。しかし、企業が公式のマレーシアのハラルロゴマークを使いたいと望む場合は、原産地国の加工工場はJAKIMから派遣された監査チームによりハラル認証に適切かどうかの検査を受けなくてはなりません。
1998年第3次農業計画で、2010年までに、マレーシアのグローバルなハラル・ハブ化を目標として開発することが決定し、2006年9月に、政府の所有する民間団体(公社)として、Halal Industry Development Corporation(HDC)が設立された。現在、ハラル規格の審査及びハラル産業の振興を担当する機関は、首相府直属のHDCである。HDCの設立以前は、JAKIMがハラル規格の担当機関であったが、JAKIMのハラル規格関係機能がHDCに移行し現在に至っている。JAKIMも政府機関であるが、宗教色の強い機関であり、他方、HDCは産業政策的な色彩の強い機関である。
ここにハラル規格を汎用化し、ハラル・ハブ化をグローバルに促進しようとする、政府の意図を読み取ることができる。現在は過渡的に、JAKIMにより認証されたハラル規格と、HDCにより認証されたハラル規格が併存している。

シンガポール(Singapore)

The Islamic Council of Singapore (MUIS)は1972年にハラルに関する業務を開始し、1978年にハラル認証書の発給を開始しました。シンガポールではすべての輸入肉(鶏肉を含む)と肉製品は輸出国のイスラム団体によりハラル認証を受け、MUISの承認を受けなければなりません。 MUISはシンガポール政府から権限を移譲されてハラルに関する規制や調整機能を果たす責任を単独で負っている機関で、次のような活動を通じてハラル食品貿易を促進しています。

  1. ① 地元輸出業者に輸出に必要な認証を与え、製品の全世界のハラル市場への輸出を促進させる。
  2. ② 地元企業(輸出業者以外の)、工場を認証する。
  3. ③ ハラル認証の標準化、規格化を目的とするフォーラムに参加する。

シンガポール議会は1999年にムスリム行政憲章の修正案を可決承認し、この修正案はMUISにハラルビジネスを管理、促進し、強化することを認め、MUISにより大きな権限を与えました。 シンガポールではハラル業務の執行において三つの政府機関がMUISと協働しています。

  • 環境省に属する食品管理局     (The Food Control Department)
  • 国家開発省に属する農業畜産局   (The Agro-Veterinary Authority)
  • 内務省に属する商業犯罪対策局   (The Commercial Crime Department)です。

シンガポールはまたアセアンの特別ワーキング・グループのハラルフードガイドライン委員会のメンバー国でもあります。

インドネシア(Indonesia)

インドネシアにおけるハラル認証プログラムは、地元ではMajelis Ulama Indonesia(MUI)として知られる宗教評議会の後援の下にスタートしました。MUIはハラルに関する各種活動を統合し、一元化する責任を食品・薬品・化粧品評議委員会(現地略語名LP-POM)とよばれる組織に負わせました。
ハラル認証書はインドネシア国内では多角的な機能を果たします。
ハラル検査と評価のプロセスは製造メーカーや輸入業者から提出された申請書から始まり、LP-POM、保健局および宗教局のメンバーからなる監査人チームが製造手順と原材料の成分を分析評価するために製造施設を訪れて検査を行います。
訪問で得られた知見は監査委員会に送付され監査委員会はMUIのファトワ委員会に報告し、MUIがその製品がハラルであるか否かを評価決定します。 保健局はハラルマークの承認にも責任を持っています。
輸入された製品に関してはLP-POMの三人の監査人チームが原産地国の生産設備とそこで製造された製品の分析評価を行い、もしその製品がハラルの要件を満たしていれば報告書が前述のように送付され、ハラル認証書が発給されることになります。MUIは同国で公認されている他国のハラル認証機関のリストを保有しています。
インドネシアでは、ハラル制度は国の定める基準ではなく、宗教機関の定める規格である。
したがってハラル規格は原則として任意規格であり、クリアすべきミニマム規格ではなく、クリアしていると高く評価される、プレミアム規格である。
ただし食肉処理などについては、強制基準である。また豚やアルコールを含有する製品は、明瞭な表示を義務付ける旨の、法令による規制がある。

中東諸国(Middle East Countries)

中東の湾岸諸国はサウジアラビアのリーダーシップのもとにメンバー諸国で使用される肉や加工食品について共通の規格化を実施しており、その規格はガルフ・スタンダードあるいはサウジ・スタンダードとして知られています。
それには多彩な食品と加工食品、食肉と肉加工品の輸入についてのガイドラインと要件も含まれています。
湾岸諸国、その他の中東各国は製品の輸入には輸出国の公認されたイスラム団体より発給されたハラル認証書の添付を要求しており、それに加えて輸出が行われる前に、そのハラル認証書が二国間の商工会議所や輸入国の領事部によって裏書きされることが必要としています。

南アジア(South Asia)

インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカなどの南アジア諸国も消費、特に外食サービス分野でハラル製品を輸入していますが、これらの国々ではハラルプログラムはそれほど明確ではありません。
パキスタンの大手フードサービス会社数社はマレーシアと類似したガイドラインの下で操業しており、自発的ながらも牛肉や鶏肉についてばかりでなく加工食品のアイテムについてもハラル認証を要求しています。

その他の国々(Other Countries)

それ以外の多くの国でも、公式にあるいは非公式に輸入食物製品に対してハラル認証書の添付が要求される可能性があります。エジプト、トルコ、タイ、フィリピン、南アフリカ、オーストラリアなどもこの中に含まれます。

概説

ハラルの評価業務やハラルモニター業務、ハラル普及の広報活動、ハラル認証書の発給業務、輸入品,国産品にかかわらずハラルを保証するためのロゴやマークの使用の許可などの業務には政府や多くの非政府組織(NGO)が関わっています。
また製品の輸入についてハラル要件を規定している国も多く、その要件は製品輸出国においても受け入れられています。